雪の一節                         (投稿者: mr.monday 投稿:平成21年 2月)


年末の28日、敦賀から大阪行きの特急に乗った。
僕の指定席は通路側で、窓側の席には27、8才の女性が眠っていた。
ピンクの暖かそうなセーターに白いショールを羽織っていた。
その日の敦賀は、快晴だった。特急がしばらく走ると、窓外に雪の残る畑が見えてきた。
と思う間もなく、どんよりとした雲が見え始め、鈍色の空から雪が激しく舞い落ちてきた。
それからは、視界が全て雪景色になった。

琵琶湖の東側だったのだろうか。はっきりとした場所は記憶していない。
雪は車窓にも激しく吹きつけてきた。
窓ガラス越しに冷気を感じたのだろうか、女性がぶるっとした感じで目を覚ました。
そして、驚いた表情で窓の外を眺めた。
「この辺りは、いつもこんな感じなんでしょうかねえ」
僕は話しかけた。
突然の質問に女性は戸惑ったようで、少し間をおいて
「冬にこの場所を通るのは、私も初めてなんです」
と呟くように応えた。

僕がそうであるように彼女もまた旅行者の可能性が高いのに、おろかな質問をしたものだと思った。
「金沢の旧い家に嫁いで、初めての冬なんです。今から故郷の熊本に帰るんです。」
九州の女なんだ。
言われてみれば、きりっとした感じの顔立ちの女性だった。
「金沢ですか、いい街ですね。でも、実際に暮らすと、どうなんですか」
「そうですね、想像していたより色々と。街の人とのつき合いとか家のしきたりとかが・・・」
女性はため息を短くついて、降りしきる雪を眺めていた。外は田畑も山も見えないくらい激しく吹雪いていた。

初めての帰省が何故ひとりなんだろうと思ったが、それは聞けなかった。
二人で窓の外の雪を眺めて、しばらく取り留めのないことを話した。

小一時間で激しい雪の地域は通り過ぎ、不意に、冬の陽が車内に差し込んできた。
「私、眠ります。なんだか、疲れているんです」
女性はそう言って、ショールを肩にかけ、眠り始めた。

♪雪でした。貴方の後を、なんとなくついて行きたかった♪
フォークグループ猫の「雪」の一節が浮かんできた。
僕も何だか眠くなってきた。

特急電車は大阪に向かって走り続けていた。