松江での格調高い夜             (投稿者: mr.monday 投稿:平成18年 3月)



列車の窓から日本海を見たくて、小浜から鈍行でだらだらと西に向かった。

着いた先は松江だった。
荒神谷遺跡など日本史好きの僕にとっては、興味引かれる場所であった。
年末の街に出てみると、商品のない野菜市場でお神楽をやっていた。
出雲らしい風情だった。
神楽が終わると帽子が回ってきた。なにがしかのお金を入れた。

それから、和食屋さんに入った。
カウンターで酒を飲んでいると、一つ置いた隣に3人組の女の子がガイドブックを片手に話していた。
酒の勢いを借りて話しかけた。千葉から来た、幼稚園の先生らだという。
寝台特急「出雲」で来たという。
3人とも清純な感じだった。
出雲大社に結婚祈願に来たのかなと思ったが、それは言わなかった。

一人は「紀子様」と呼ばれていた。
当の紀子様は、当時結婚されたばかりだったと思う。
彫りの深い知的な顔をしていた。

食事の後のお茶に誘ったら、3対1の気楽さからか行くという。
あてはなかったが、繁華街を適当に歩いて喫茶店に入った。
席はほぼ満席で、静かに何かを待つような雰囲気だった。
注文してしばらくしてそれが分かった。
僕らの席のすぐそばに、正装してバイオリンを持った人達がやってきたのだ。

店の中で弦楽四重奏が始まった。
僕らの席は特等席だった。しかし、他の客の視線もこちらに来るので落ち着かなかった。
さすが、文化都市「松江」だった。

「硬い雰囲気は苦手だな」と言ったら、「私は好きです」と紀子様に言われた。
格調の高い夜は更けていった。


寝台特急「出雲」廃止と聞いて、思い出した話。